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その時どうする

子年(ねずみどし)生まれだからか、
私は細い裏道が好きだ。

私がいるお寺の山は、東名、名神、中央道と
高速道路に囲まれた場所にある。

そのこともあって、車ででかける時はよく、
高速の測道を利用する。

渋滞していなければ大通りのほうが早いかも
しれないが、やっぱりクネクネした抜け道を
通りたくなる。

何より信号がないし、
今ではあまり見かけなくなった、
きつねや狸に出会える確立も高い。

昨夜も夜9時ごろ、高速道路の測道を通った。

出先からの帰りで、
帰り次第スカイプで連絡する用件があったため、
若干車を飛ばしていた。

高速道路の側道は、ところどころアップダウンがあるが、

アップの頂で、高速をまたいで架かっている
陸橋の横にさしかかった時、

ふと、人気を感じて陸橋に目をやると、

若い女性が1人、陸橋の際に立ち、
真下に走る車を眺めている姿が目に入った。

急いでいたため、

一瞬目をやって通り過ぎたのだが、
通り過ぎてからの胸騒ぎが半端でない。

じっと見て確認した訳ではないが、
あきらかに冬の夜に出歩く格好ではなかった。

この寒いのに防寒具も着ておらず、
下は短パンか、ショーツのみ、あるいは
キャミソールのような薄手のものしか
履いていなかったような気もする。

この時間に、この寒さの中、
1人で散歩しているのもおかしい。

家で何かあったのだろうか?

彼氏とケンカでもしたのだろうか?

ひょっとして暴漢に襲われでもしたのだろうか?

とにかく、雰囲気も普通ではなかった気がした。

ひょっとして、あそこから高速道路に
飛び降りるつもりではないだろうか。

そう思ったら、いてもたってもいられなくなって、
すぐに車をUターンさせ、彼女のいた陸橋まで
全速力で戻った。

遅かったか、
橋の上には彼女の姿はなかった。

急いで車を降りて、橋の下を確認すると、
飛び降りた様子もない。

目を凝らして周りを見渡すと、、、
よかった。

高速道路を挟んで反対側の側道に
彼女の姿があった。

すごい勢いで走ってきた車から、
これまたすごい勢いで見知らぬ男が
降りてきて橋の上でウロウロしているものだから、
警戒したのだろう。

身を隠すようにジッとして動かない。

服装はやはりトレーナーと、
下は、キャミソールか短いスカートのみだ。
靴も履いていない。

明らかにおかしい。

「大丈夫?」

声をかけながら近寄ろうとすると、
近寄った分だけ移動する。

もう少し早足で近づこうとすると、
ダッシュして逃げた。

あれだけ早く走れるということは、
被害にあった訳でもないだろう。

もし飛び降り自殺でもしようとしていたのなら、
もう大丈夫。

家族か彼氏とケンカでもして家を飛び出したのなら、
なお問題ない。

これ以上追えば、今度は私が犯罪者になる。

私の勝手な取り越し苦労だ。

そうなれば、ただの変態坊主だ。

それでいい。

彼女が無事なら、多いに結構。

心配ではあったが、車に戻った。

私は過去に3人、自殺を図った人を目の当たりにした。

1人は、同級生。ビルから飛び降りた。
1人は、見知らぬ人。橋から飛び降りた。
1人は、カウンセリング中。目の前で手首を切った。

あの時、あの場の空気は、一生忘れることはないだろう。

だから、もし目の前で人が自殺をしようとしているのなら、
何とかして食い止めたい。

その時、あなたならどうするだろうか。

専門家に語らせれば様々なノウハウはあるだろう。

ただ、私が自殺に関連して思い出すのは、

数年前にニュースとして取り上げられた
劉文秀さんの話だ。

劉さんは、中国広東省、深センのホテルに
フロントとして勤務する19歳の女性で、
同市内に住む16歳の少年を自殺から救った。

少年が、飛び降り自殺を図ろうとしている現場を
通りかかった劉さんは、少年に説得を試み、
いきなり抱きついてキスをしたのだ。

見知らぬ女性に突然キスをされた少年は、
自殺を思いとどまり、消防隊員に救助された。

劉さんは両親が離婚、姉の体も弱く、生活苦から
自殺を考えた過去があるという。

劉さんの大胆で勇気ある行動の裏には、

自分にも愚かであった過去があるから、
今回自殺を図った少年にも、愚かであることを
知って欲しかったという思いがあった。

テクニックも大事だ。理屈も大事だ。
ただ、最終的に、人は人の本気に動かされる。

思いに動かされる。

劉さんの話は、いつもそのことを
私に思い出させてくれる。

そしてその時、見知らぬ人だからといって
放っておかない劉さんの優しさに、頭が下がる。

だからといって、私が今回橋の上の彼女の
もとへ戻ったのは、キスをするためではない。

誤解なさらぬよう。

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