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芸は身を助ける

インドの3つ星ホテルでの話です。

ホテルに着くなり、ホテルのボーイが
玄関に出てきて、荷物を部屋に運んでくれました。

続いて私が部屋に行くと、
室内の設備を軽く案内してくれて、

「フレッシュジュースをお持ちしましょうか」
と聞いてきます。

部屋についていきなりだったので、

とりあえず、「後でもらうよ」と言って
シャワーを浴びようとバスルームに行きました。

デリーの朝晩はかなり冷えるので、
温かいシャワーを期待していたのですが、
3つ星ホテルぐらいだと温水は出ないようです。

少し旅の疲れもあって冷水を浴びる気力が
なかったので、

タオルを湿らせて体を拭き、
何か温かい物でも食べようと、

ホテルの外へ出かけました。

ホテルに到着したときには、どこにホテルがあるのか
ばかり気にしていたので気づかなかったのですが、
ホテルの真ん前に、絞りたての生ジュースを
飲ませてくれる小さな店がありました。

見ると、先ほど荷物を部屋に運んでくれた少年が
出入りしているではありませんか。

どうやら、彼はホテルの客の荷物ポーターを
しながら、ジュースの運び屋をやってチップを
もらっているようです。

近くの食堂でカレーを食べてから、
生ジュースを飲むことにしました。

ここで、いきなりジュースを頼んではいけません。
先ずジュースの相場を知ることが大切です。

遠巻きに現地の客がジュースを買う様子を
見ていると、どうやら一杯20ルピーのようです。

そのことを確認してから、ジュース屋に近づき、
ミックスジュースを頼みました。

ジュース売りは12~5ぐらいの少年で、

7~8才の弟と見られる別の少年に
作業を手伝わせながら、慣れた手つきで
ジュースを絞ってくれました。

ところが、

グラスからこぼれそうなぐらい満杯の
ジュースと引き替えに準備していた
20ルピー札を手渡そうとすると、

首を振って「100ルピー」
と言うではありませんか。

「おかしいな、さっきの人達みんな
20ルピーだったけど、どうして僕のは
100ルピーなの」

と聞くと、

これはスペシャルジュースだから
値段が違うといいます。

そこで、

「私は20ルピーしかもっていないから、
20ルピーで売ってくれ。その代り、特別な
空手の技を教えてやる。

ジュースなんてどこでも売っているけど、
空手の技を教えてくれる人はそういないよ。

この技を覚えれば、兄弟や友達を守って
あげられるし、人が集まっている所で
披露すれば、1人10ルピー、10人から
もらっても、100ルピーになる」

というと、やはり「ノー」という。

それ以上押し問答してもしょうがないので、
100ルピーを渡してジュースをぐい飲みし、
部屋に戻りました。

その晩、もう寝ようと思ったところへ
部屋にノックがありました。

出てみると、荷物を運んでくれた
あのボーイ君です。

何事かと思ったら、

「さっきの空手の技を教えて欲しい」
と言うではありませんか。

見ると手には100ルピーを握っています。

思わず笑ってしまいましたが、
なんだかその純粋さに心が温かくなりました。

空手の技ではないのですが、

いきなり胸ぐらを捕まれたときに
相手をねじ伏せる技を教えてあげました。

もちろん100ルピーは受け取りませんでした。

次の朝、私が宿を離れる時、

彼は舎弟のように荷物を運び、
タクシーを捕まえ、
最後まで見送ってくれました。

ジュースを売っている限り、
売ったジュース代しか手に入りません。

しかもジュースは誰でも作って売れます。

しかし、

他の人がなかなか持っていないスキルは、
誰もが持っていないからこそ、より高い価値で
評価されます。

しかも、それが欲しい人がいれば、
自分が欲しいものと交換することも可能です。

何でもいいけれど、

人に喜ばれるスキル、
人を助けるスキル、
人があまり持っていないスキルを
何か一つでも身につければ、

世界のどこに行っても、
とりあえず食べていけることを
あらためて実感しました。

まさに、「芸は身を助ける」です。

彼が今頃あの技を披露して、
友達の注目を集めている姿を想像すると、
ちょっと嬉しくなります。

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